放送大学島根同窓会は2013年4月に発足しました。その発足は全国的には遅い設立でしたが、設立に当たっては、次のようなことを目標としました。

・同窓会員の相互の交流と親睦を通して相互研鑽を図る。
・島根学習センターの支援・発展と地域・社会への貢献に寄与する。

島根県は周知のように日本海に沿って東西に長い県ですが、県の東部、中部、西部のそれぞれの地域でこれまで公開講座の開催や島根学習センターと同窓生や在学生を交えての懇談会を実施するなどさまざまな活動を行っています。

写真は雲南市吉田にある全国で唯一現存する「菅谷たたら」の高殿である。「菅谷たたら」とは古代製鉄の技法「たたら製鉄」の遺構である。菅谷たたらはこの地域の有力者田部家によって寛政4年(1792)から大正10年(1921)まで120年間操業が行われた。たたら製鉄は丸一日かけて炉を作ることから始まり、炉を乾かした後、木炭を入れ、鞴(ふいご)で風を送って火を起こし、砂鉄をいれる。「砂鉄を入れる→木炭を入れる→砂鉄を入れる」これを3日間から4日間繰り返し、最後に炉を壊して鉄を取り出す。この間村下(むらげ)と呼ばれる技師長の不眠不休の中で炎の色とか、砂鉄や炭を入れるタイミングなど勘と経験が鉄の品質に大きく影響するので非常に過酷な現場でもあった。そのため村下は「村下坂」と呼ばれる坂を下って道路にでるとそれに沿って川があり、静かな水の流れのなか、ほどなく金屋子神が祀ってある場所に出る。そこで村下は一連の作業の安全を祈るのである。また、操業の前提として、良質の砂鉄、木炭、窯土が近くに採取できるかが大きな要素を占めた。
高殿は縦横約18mの正方形の建物である。中央にあった炉から四方の各隅に押立柱といわれる柱があり、建物の構造上の安定のため重要であった。入口から奥の中央に小鉄(こがね)町という砂鉄を置く場所があり、その両側に燃料の炭を置く炭町がある。入口は左右に2ヵ所あるが、その中央に土町という炉を築くための粘土を置く場所があった。炉の左右には村下座や炭坂座という詰所(控室)があり、また屋根の頂部には空気の流れを調節するための火宇内(ほうち)が設置されている。
平成26年に2年間にわたった大規模な修復工事が完成した。高殿の栗の木のこけら屋根葺きや土壁は一新され、押立柱は補強され、屋根の頂部の火宇内は新しくなった。今ではすっかり有名になったが、毎年3月下旬にはたたらの炎のように真っ赤に染まった芽吹きを3日間だけ見せるだろう。