市民公開講座「地球温暖化と気象災害」が開催されました

2月9日(日)13時30分より島根学習センター第1講義室において市民公開講座「地球温暖化と気象災害」が行われました。講師は島根学習センター所長の田坂郁夫先生です。当日は好天に恵まれ約40名が熱心に聴講しました。
講演の大略はつぎの通りです。

1.地球温暖化とは
・地球表面の気温が人為的起源による温室効果ガスの増加によって20世紀後半以降急激に上昇している現象
・地球はこれまでにも、数億年あるいは数千年単位で温暖化、寒冷化してきたが、地球温暖化という場合は「20世紀後半以降」の「人為起源の気温上昇」を指す場合が多い

▲温室効果ガスの種類
・二酸化炭素   ・メタン
▲20世紀後半以降のCO2濃度の変化
・二酸化炭素濃度はこの60年間で、310ppmから400ppmへ約30%増加している
・2018年の世界平均濃度は407.8ppmに達している
▲1891~2018年の世界の気温変化
・地球の気温はこの130年間、上昇を続けています
・気温の上昇率は100年間で約0.73度です
・2000~2010年はハイエイタス(中断、停滞)と呼ばれ、気温の上昇が停滞していましたが、その後再び気温は(より激しく?)上昇を始めています

2.地球温暖化の予測
気象庁:「地球温暖化予測情報 第9巻(2017)」から
・気象庁が1996年度から随時発表
・今後、二酸化炭素排出の削減など追加的な政策を行わず、温室効果ガス濃度が最も多くなると想定。(以下の話は20世紀末(1980~1999年)に比べてです
・地域区分 松江(山陰)は西日本日本海側に含まれるが、ここには九州北部も入っている

①気温
・年平均気温は全国で約4.5度、西日本日本海側で4.1度上昇
・松江:年平均気温14.9度→19.0度に上昇(現在の屋久島・種子島)
・北日本地域ほど、温度上昇が大きい(地球全体でも同様)
・冬・秋(寒候期)の温度上昇が大きい → 暖冬が当たり前
・1月の平均気温 4.3度→9.0度(現在の3月の平均気温よりも1度以上高温)
・真夏日:7月21日~8月30日 → 6月17日~9月19日
・夏日;6月4日~9月24日 → 4月30日~10月18日
・冬日:28日、真冬日:0.2日 → なくなる

②降水
・年降水量は変動の幅が大きく、予測ができない
・あえて言えば、北日本と沖縄は増加、東日本、西日本は減少
・大雨、土砂降りは増える
・年々の変動が大きい

③積雪・降雪
・降雪量89cm、再深積雪20cm → いずれも0(ゼロ)

3.近年の気象災害
▲気象災害:気象現象または気象現象に付随して発生する現象に起因する破壊力によって発生する災害(気候学・気象学より)
▲2019年に発生した世界の気象災害
・高温災害、大雨災害の割合が高い
・世界では1年を通してどこかで異常気象が発生している
▲日本における異常高温の発生
・最高気温40.0度以上を観測した地点は全47回のうち、30回が2010年以降に観測
・戦前に観測されたのは2回だけ(山形と宇和島)
▲日本における大雨の記録
・気温と異なり、近年大雨強雨が極端に増えているとはいえない
▲松江の気象極値
・21世紀に高温の記録が多くなっている
・降水量は近年特に増えているとはいえない

最近の気象災害
▲主な気象災害とその比率
・雨に関係する災害(大雨害、風水害)が約60%をしめる
・強風に伴う災害(風水害、強風害、風浪害)が約35%
▲月ごとの発生件数とその種類
・1年を通じて様々な災害発生している
・冬は雪関連、冬~春は強風に起因するもの、梅雨~秋は大雨に関する災害が多い(注意を要する)
▲災害の経年的特徴
・平均して年間約5件発生
・増減傾向は見られない

4.気象災害、特に大雨災害への備えと対応
平常時の備え
▲自宅の周辺を観察する
・崖があるか。その高さは ・傾斜地か ・渓流があるか。その渓流は土石流危険渓流か ・谷の出口か。尾根の影か ・小川(用水路・側溝)があるか ・谷底にあるか
▲ハザードマップ(災害予測図)を確認する
・松江市HP→(暮らしのガイド→安全・安心)→防災情報
・松江市防災ハザードマップ(公民館区別災害予測図)
・津波浸水想定区域マップ
・松江市ため池ハザードマップ(農林基盤整備課)

事前の準備
▲非常備蓄品
非常備蓄品は、災害復旧までの数日間(最低3日分)自ら生活できるように準備しておくもの。食品、水、燃料。高齢者や乳幼児用食品(粉ミルクや離乳食、流動食、おかゆなど)
・備蓄しているものは適度につかう。そして補充する
・1か所にまとめて保管しないで家のあちらこちらに保管する
▲非常持ち出し品
貴重品、ラジオ、非常食品、懐中電灯、応急医薬品、衣類、洗面用具など
▲災害情報を入手するための準備
・携帯電話(スマホ)に松江市防災メール・しまね防災メールを登録する
・防災関連アプリを入れる。Yahoo防災速報、らじるらじる

災害時の対応
▲雨の強さと降り方
・気象用語を覚える
・天気予報やニュースで使われる「激しい雨」「非常に激しい雨」「猛烈な雨」は雨量の目安です
・気象注意報・警報・特別警報
・特別警報は2011年の東日本大震災や紀伊半島を契機に制定された。(2013年8月開始)
・数十年に一度の現象(大雨など)が予想されるときに発表される。
▲避難のための情報
・避難準備・高齢者等避難開始  ・避難勧告  ・避難指示(緊急)
▲避難の心得
・夜間の避難は極力避ける。特に大雨時は音が聞こえない、周りの様子が見えないなど非常に危険
・冠水している道路は避ける。マンホールや側溝に落ちる
・避難できる水深の目安は、高齢者・子どもは20cm、成人男性50cm、これ以上は自宅に留まる。水が流れている場合はこの深さも危険
・谷筋の下流へは避難しない。土石流が追いかけてきます。斜面を水平方向(尾根の部分)に
・マンションなどの上階(3階・4階以上)の人は比較的安全です(備蓄は忘れずに)
・自宅に留まるときには上階へ垂直避難。非常備蓄品も上階へ

5.まとめ
・地球温暖化は進行しています
・今世紀末には現在と著しく異なった気候環境も予測されています
・松江はたびたび災害が発生してきました。ということは、これからも災害の起きる可能性が高いということです
・日頃から災害への備えをしておきましょう
・災害の発生が予想されるときは、早めに避難を心がけましょう
・家族から避難を呼びかけられたら、我を張らずに避難しましょう
・ご近所に避難仲間を作っておき、お互いに声を掛け合い避難しましょう