市民公開講演会「国際化する消費者被害」を開催しました

2018年4月22日(日)午後1時30分より島根学習センター4階第2講義室において第6回通常総会の第1部として総会記念市民公開講演会「国際化する消費者被害-消費者センター相談事例から-」(平成30年度消費者問題出前講座)を開催しました。
経済社会のグローバル化の急速な進展により、私達の消費生活にもグローバル化の影響が及んでおり、世界中の国や地域から輸入された多くの商品に囲まれて日常生活を送っています。しかし、その取引においてトラブルも多数発生しています。当日、多くの参加者がありましたが、私達はこれに巻き込まれない対策や心構えが必要になってきました。
今回、講師として田邊和佳子さん(島根県環境生活部環境生活総務課 消費とくらしの安全室(島根県消費者センター) 調整監)をお迎えしました。
講演の主な内容は次の通りです。

最初にスマートフォンやインターネットの普及によって一般消費者に及ぼした影響を「平成28年度電子商取引に関する市場調査(経済産業省)」から次のように概観された。
・国内B to C EC(物販)市場規模が2016年には15兆円を突破し、EC化率は 5.43 %となった。
・B to C EC(物販)のスマートフォン経由の市場規模は2016年には25,559 億円でスマホ比率は 31.9 %と利便性や簡便性からか3分の1を占めるようになった。
・ネットオークションの市場規模は 10,849 億円であるが、そのうち、個人間のC to C による市場規模は 3,458 億円で既に3分の1を超えている。
・2012年に誕生したフリーマーケットアプリの市場規模は、2016年には3,052億円となり拡大傾向にある。フリーマーケットアプリは高校生、大学生から中学生まで拡がり場合によっては小学生にまで入ってきている。
・国境を越えたEC 市場規模(2016年)は日本、米国、中国の間の輸入額で、日本 2,396億円、米国 10,415 億円、中国 21,737 億円である。

経済のグローバル化は消費者がインターネット経由で海外事業者とネットショッピング、ゲーム、LCCなどの格安航空券、金融商品取引等の取引で海外事業者とのトラブルが多数発生するようになり、2011年11月に越境消費者センター(CCJ)が開設され、2016年には国民生活センターに業務が移管され、より迅速に対応できるようになった。CCJの役割は、海外ショッピング等でトラブルにあった消費者のための相談窓口と海外の窓口機関と連携して消費者と海外事業者の間に入りトラブルの解決をお手伝いすることである。
2017年11月現在、連携可能な国は、アメリカ、カナダ、メキシコ、韓国、台湾、シンガポール、マレーシア、ベトナム、フィリピン、タイ、スペイン、ロシア、南米10カ国、イギリスである。(上記以外でも相談には応じている。)

また、CCJが受け付けた相談の内容を「平成29年度版消費者白書(消費者庁)」によって概説された。
・取引類型別では圧倒的に電子商取引が多く、年齢別では40歳代や中高年層が多い。
・商品・サービス類型別割合は身の回り品やソフトウェアが多い。
・決済手段別相談件数をみると近年は圧倒的にクレジットカードが多い。
・トラブル類型別-決済別の相談件数をみると解約ではクレジットカード、詐欺疑いでは金融機関振込が多い。
・事業者所在国別の推移では米国や英国よりも所在国不明の場合が大幅に上回り、トラブル解決を難しくしている。
・事業者所在国別-トラブル類型別の相談件数の推移では米国は解約、中国は詐欺疑いや模倣品の到着、英国は解約、所在国不明では詐欺疑いや解約が多い。

次に島根県消費者センターが扱った消費者トラブルの次のような相談事例:
出会い系サイト、ウイルス対策ソフト、副業サイト、ネット通販、FX取引(外国為替証拠品金取引)とバイナリーオプション取引(為替等の上下を予測して判定時刻に事前に定めた権利行使価格を上回った(下回った)場合に一定の金銭を受け取る仕組み)、マルチ取引、仮想通貨についての解決策や対応について詳細に説明された。

一方で販売方法や支払い方法の多様化によって、身の回りにはIC型電子マネー、サーバー型電子マネーやクレジットカードが生活に浸透してきた。こうした中でクレジットカード会社(加盟店契約会社)、(決済代行業者)は改正割賦販売法が平成30年6月までに施行され、国内に事業所がある場合は、新たに経済産業省の登録が必要になりました。
また、マルチ取引の場合、海外事業者との間で日本語は不可とか、事業者は海外法人であったり、海外法に準拠だったり、クーリング・オフは3日のみとか、問い合わせ窓口がないなどの解約トラブルが発生し、簡単には返金されないことが多い。

まとめ:賢い消費者になるためには
・ネットで何か始めるときは、会社概要(企業名、住所、代表者、連絡方法、認可の有無等)を必ず確認する。
・金融商品の場合、書面や画面で契約内容をよく確認して記録に残す。ネット販売ではそもそも契約書が存在しない。
・問い合わせ窓口の有無、日本語対応しているか等を事前に確認する。
いずれにしても基本中の基本は「必ずもうかる」は疑ってかかることである。