月別アーカイブ: 2020年2月

放送大学学位記授与式等の中止について

3月21日(土)にNHKホールで開催予定の学位記授与式や同窓会と共催する祝賀パーティは中止することになりました。これはわが国における新型コロナウイルス(COVID-19)の感染が拡大する状況を受けたものです。

これに伴い、3月29日(日)に島根学習センターで開催される予定であった学位記授与式、卒業を祝う会、新学期の入学予定者の入学者の集いや茶話会も中止となりましたのでお知らせします。

2020年3月卒業生・修了生の「学位記」は3月末に大学本部より送付されますのでご承知願います。

 

令和1年度修士論文発表会を開催しました

2月9日(日)、島根学習センター 3階 第一講義室において、令和1年度卒業研究・修士論文発表会が市民公開講座「地球温暖化と気象災害」(講師 放送大学島根学習センター 田坂郁夫所長)に続いて15時15分から開催されました。今年度は修士論文が2名の方により発表が行われました。当日は珍しく好天に恵まれ、会場では多数の参加者や客員教員の出席のもと、田坂郁夫学習センター所長の司会により進められました。
発表された方のテーマ、簡単な発表内容は次の通りです。

「就労型継続支援B型事業所の作業療法士の関わり~3事例から見るアセスメントによる要因の特定~」
生活健康科学プログラム  金弦さん

 ◇就労支援分野で働く作業療法士の役割を質的調査にて調査することで、作業療法士のアセスメントが対象者に必要な要因の特定を高め、QOL向上に役立っていることを明らかにすることが目的である。
問題意識として①障害者就労支援で実施されるアセスメントが本当に就労に特化した内容であるかどうかという点と、②障害者の障害を専門的にアセスメントする職種の役割が曖昧である点である。
◇このため日本作業療法士協会が作業療法を「見える化」し、多職種にも分かりやすく説明するためにMTDLP(生活行為向上アセスメント)を開発したが、明らかになったことは次の2点である。
①作業療法士が対象者にアセスメントする際、身体機能面に限定されず、背景因子として対象の個人因子を評価し、対象者にとって重要度の高い作業を遂行する上で必要な要因の特定を実施している点である。②医療専門職には病気を診るだけになく、予後予測の観点が必要である点である。作業療法のMTDLPには、教育プロセスとして予後予測の実施が明確化されている。
◇本稿の仮説
・仮説ー「障害者就労支援において、対象者のQOLを高めるために、就労継続支援B型事業所の作業療法士はMTDLPの視点でアセスメントをしているか」である。
・仮説の問いに対する仮の答えー「就労継続支援B型事業所の作業療法士は、MTDLPの視点でアセスメントの視点による要因の特定を高めているために、対象者への介入を段階づけて実施することが最もQOLの質を高める」と設定する。
◇本研究では次の方法で就労継続支援B型事業所での作業療法士の関わりを調査した。
1)対象者:作業療法士3名  2)調査機関:2019年7月~10月 3)調査方法:インタビューによる半構造化面接(1名に対し約60分間) 4)調査場所:各作業療法士が勤務する事業所を訪問
◇その結果
①3名の作業療法士はMPDLPの視点でアセスメントし対象者に必要な要因の特定を高めていた点が無意識に行われていた点が明らかになった。②MTDLPの視点で対象者に必要な要因を高めるアセスメントのプロセスにおいて、対象者が疾患の特性を理解し、課題を自ら発見し解決できる能力を獲得できるよう支援を実施していた。③作業療法士の関わり方として対象者を主に関わる考え方ではなく、対象者が生活する地域のニーズをアセスメントすることから対象者を支援が有効であることが明らかになった。
◇おわりに
・今回の研究で就労支援に対する作業療法士の関わりは対象者のQOLを向上させるために有効なプロセスを踏んでいることから、就労継続支援B型事業で作業療法士の役割が発揮されることが明らかとなった。
・今後の課題としては、就労支援現場で働く作業療法士が、支援実態を活発に報告していくことが必要である。報告があがることで作業療法士の役割が多職種に伝わり、就労を支援する作業療法士の活躍の場も広がると考えられる。

「作家 赤江行夫論-《占領》の文学-」
人文学プログラム 永見さん

一 作家赤江行夫とは
福島郁穂(いくお)=赤江行夫
1918年(大正7)10月19日~1990年(平成2)12月22日 行年72
能義郡赤江村今津に生誕 (安来)
父、福島亮と母、年能の長男
赤江村立今津尋常小学校卒
島根県立松江中学校卒
神戸高等高等工業学校建築科卒
工場建設技師、数学・建築史及教師を経て、戦後に特別調達庁に勤務
◇賞歴・候補歴
候補 第35回直木賞 1956年(昭和31上期)
候補 第36回直木賞 同年(昭和31下期)
週刊小説創刊記念賞金1千万円懸賞小説佳作 (昭和48)他多数
◇参考
特別調達庁・連合国の需要する建造物及び設備の営繕並びに物及び役務の調達
退職後は茨城県土浦市鳥山町に住む
墓所 つくば市泊崎町 牛久沼聖地公苑 福島郁穂大人命

二 赤江行夫の著作
著作分類  編数       備考
小説    45編 内著書 『長官』『不発弾』『ほらふき伝次』
追悼文    6編 「鼠の糞」長谷川伸への追悼文が最初、他に新鷹会への諸先輩のもの
随想    17編 「椿おつや」への追悼文と言えるものであるが、随想としたその他    2編 ルポ・短文
中学時代著作 3編 「社日桜の話」「大山寺」「快勝記(庭球部)」
建築関係著作 2編 「日本建築史」「宮古島農家による日本原始家屋への一考察」
未発表著作 21編 近代日本文学館所蔵
計     98編

三 赤江行夫の作家人生(四期に分ける)
著作(区分)   小説   追悼文    随想    その他
・始動期      7編
(29歳~35歳)
・成長期     14編   1編          1編
(36歳~45歳)    (内 著書3冊)
・帰伏期
(46歳~51歳)             1編    1編
(46歳~57歳)        2編   1編    5編
・成熟期
(52歳~72歳)           24編   6編   16編    1編
(58歳~72歳)        22編   6編   12編    1編

計          45編   8編   17編    2編

四 赤江行夫の代表作
1「ザ・リマウ(350枚)」1961年(昭和36)
2「通訳の勲章(500枚)」1972年(昭和47)
『週刊小説』創刊記念懸賞小説佳作 1973年10月
3 改訂「通訳の勲章(410枚)」の草稿 1974年(昭和49)
4「虎が来る(348枚)」1985年(昭和60)
第八回放送文学賞佳作1986年3月
5「虎(299枚)」1990年(平成3)
これらは、現在確認されているもののみで執筆期間は凡そ30年間である。この長期間の改訂については、赤江の場合は小説のタイトルを変えて書き続けた。
68年にノーベル賞を受賞した川端康成の『雪国』は同じタイトルで36年間にわたって改訂をつづけている。作家にとって最も思い入れのある著作は存在するということなのだろう。それを、代表著作とここでは考えたい。

五 赤江行夫は何を表現したか
赤江行夫は、福田清人の指導のもと純文学から始めた。そのため、『大衆文芸』に掲載されていたのは多くのが中間小説であったと思う。現在は、文学区分が判然としない状況ではないかと思っている。少なとも作家が何を表現しようとしたのかが大切になってくる。

赤江行夫は何を表現したか?
●幻想文学と称する一群(7編
幻想文学は赤江の旧制中学時代、そして赤江の作家としての成長期から成熟期にも記される。赤江の幻想文学は少年時代から赤江自身の人間性の維持のためのもので、誰にも迷惑をかけない、邪魔されない自由空間であったのではないかと思う。●《占領》の文学と称する一群(15編)
西沢正太郎や真鍋元之が「手に負えない大きな課題」「社会派らしい壮大なテーマ」と表現したものと重なるもの。(赤江の仲間内の評価)
「ここでは、ある特定の場所がある人(或いは物)によって占められ、支配される。占領もあり、そうでない「占領」もある。そんな状況の中での人々の反発、適応、迎合及び直視する行為を描いた文学」とする。

それぞれの発表の後、司会の学習センター所長、客員教員から講評があった。最後にひと際大きな拍手で発表者を讃えた。

市民公開講座「地球温暖化と気象災害」が開催されました

2月9日(日)13時30分より島根学習センター第1講義室において市民公開講座「地球温暖化と気象災害」が行われました。講師は島根学習センター所長の田坂郁夫先生です。当日は好天に恵まれ約40名が熱心に聴講しました。
講演の大略はつぎの通りです。

1.地球温暖化とは
・地球表面の気温が人為的起源による温室効果ガスの増加によって20世紀後半以降急激に上昇している現象
・地球はこれまでにも、数億年あるいは数千年単位で温暖化、寒冷化してきたが、地球温暖化という場合は「20世紀後半以降」の「人為起源の気温上昇」を指す場合が多い

▲温室効果ガスの種類
・二酸化炭素   ・メタン
▲20世紀後半以降のCO2濃度の変化
・二酸化炭素濃度はこの60年間で、310ppmから400ppmへ約30%増加している
・2018年の世界平均濃度は407.8ppmに達している
▲1891~2018年の世界の気温変化
・地球の気温はこの130年間、上昇を続けています
・気温の上昇率は100年間で約0.73度です
・2000~2010年はハイエイタス(中断、停滞)と呼ばれ、気温の上昇が停滞していましたが、その後再び気温は(より激しく?)上昇を始めています

2.地球温暖化の予測
気象庁:「地球温暖化予測情報 第9巻(2017)」から
・気象庁が1996年度から随時発表
・今後、二酸化炭素排出の削減など追加的な政策を行わず、温室効果ガス濃度が最も多くなると想定。(以下の話は20世紀末(1980~1999年)に比べてです
・地域区分 松江(山陰)は西日本日本海側に含まれるが、ここには九州北部も入っている

①気温
・年平均気温は全国で約4.5度、西日本日本海側で4.1度上昇
・松江:年平均気温14.9度→19.0度に上昇(現在の屋久島・種子島)
・北日本地域ほど、温度上昇が大きい(地球全体でも同様)
・冬・秋(寒候期)の温度上昇が大きい → 暖冬が当たり前
・1月の平均気温 4.3度→9.0度(現在の3月の平均気温よりも1度以上高温)
・真夏日:7月21日~8月30日 → 6月17日~9月19日
・夏日;6月4日~9月24日 → 4月30日~10月18日
・冬日:28日、真冬日:0.2日 → なくなる

②降水
・年降水量は変動の幅が大きく、予測ができない
・あえて言えば、北日本と沖縄は増加、東日本、西日本は減少
・大雨、土砂降りは増える
・年々の変動が大きい

③積雪・降雪
・降雪量89cm、再深積雪20cm → いずれも0(ゼロ)

3.近年の気象災害
▲気象災害:気象現象または気象現象に付随して発生する現象に起因する破壊力によって発生する災害(気候学・気象学より)
▲2019年に発生した世界の気象災害
・高温災害、大雨災害の割合が高い
・世界では1年を通してどこかで異常気象が発生している
▲日本における異常高温の発生
・最高気温40.0度以上を観測した地点は全47回のうち、30回が2010年以降に観測
・戦前に観測されたのは2回だけ(山形と宇和島)
▲日本における大雨の記録
・気温と異なり、近年大雨強雨が極端に増えているとはいえない
▲松江の気象極値
・21世紀に高温の記録が多くなっている
・降水量は近年特に増えているとはいえない

最近の気象災害
▲主な気象災害とその比率
・雨に関係する災害(大雨害、風水害)が約60%をしめる
・強風に伴う災害(風水害、強風害、風浪害)が約35%
▲月ごとの発生件数とその種類
・1年を通じて様々な災害発生している
・冬は雪関連、冬~春は強風に起因するもの、梅雨~秋は大雨に関する災害が多い(注意を要する)
▲災害の経年的特徴
・平均して年間約5件発生
・増減傾向は見られない

4.気象災害、特に大雨災害への備えと対応
平常時の備え
▲自宅の周辺を観察する
・崖があるか。その高さは ・傾斜地か ・渓流があるか。その渓流は土石流危険渓流か ・谷の出口か。尾根の影か ・小川(用水路・側溝)があるか ・谷底にあるか
▲ハザードマップ(災害予測図)を確認する
・松江市HP→(暮らしのガイド→安全・安心)→防災情報
・松江市防災ハザードマップ(公民館区別災害予測図)
・津波浸水想定区域マップ
・松江市ため池ハザードマップ(農林基盤整備課)

事前の準備
▲非常備蓄品
非常備蓄品は、災害復旧までの数日間(最低3日分)自ら生活できるように準備しておくもの。食品、水、燃料。高齢者や乳幼児用食品(粉ミルクや離乳食、流動食、おかゆなど)
・備蓄しているものは適度につかう。そして補充する
・1か所にまとめて保管しないで家のあちらこちらに保管する
▲非常持ち出し品
貴重品、ラジオ、非常食品、懐中電灯、応急医薬品、衣類、洗面用具など
▲災害情報を入手するための準備
・携帯電話(スマホ)に松江市防災メール・しまね防災メールを登録する
・防災関連アプリを入れる。Yahoo防災速報、らじるらじる

災害時の対応
▲雨の強さと降り方
・気象用語を覚える
・天気予報やニュースで使われる「激しい雨」「非常に激しい雨」「猛烈な雨」は雨量の目安です
・気象注意報・警報・特別警報
・特別警報は2011年の東日本大震災や紀伊半島を契機に制定された。(2013年8月開始)
・数十年に一度の現象(大雨など)が予想されるときに発表される。
▲避難のための情報
・避難準備・高齢者等避難開始  ・避難勧告  ・避難指示(緊急)
▲避難の心得
・夜間の避難は極力避ける。特に大雨時は音が聞こえない、周りの様子が見えないなど非常に危険
・冠水している道路は避ける。マンホールや側溝に落ちる
・避難できる水深の目安は、高齢者・子どもは20cm、成人男性50cm、これ以上は自宅に留まる。水が流れている場合はこの深さも危険
・谷筋の下流へは避難しない。土石流が追いかけてきます。斜面を水平方向(尾根の部分)に
・マンションなどの上階(3階・4階以上)の人は比較的安全です(備蓄は忘れずに)
・自宅に留まるときには上階へ垂直避難。非常備蓄品も上階へ

5.まとめ
・地球温暖化は進行しています
・今世紀末には現在と著しく異なった気候環境も予測されています
・松江はたびたび災害が発生してきました。ということは、これからも災害の起きる可能性が高いということです
・日頃から災害への備えをしておきましょう
・災害の発生が予想されるときは、早めに避難を心がけましょう
・家族から避難を呼びかけられたら、我を張らずに避難しましょう
・ご近所に避難仲間を作っておき、お互いに声を掛け合い避難しましょう